1989年JR東海のCMで牧瀬里穂主演でクリスマス・エクスプレスが放映された。
名古屋駅の改札口近くの柱の影で牧瀬里穂が、東京から帰ってくる恋人を待っている。
彼が、改札口をでてくると、息をはずませて、牧瀬里穂が飛び出してゆく・・・。
50歳前後の方は、きっと覚えていることだろう。
このCMで「クリスマスは恋人同士で過ごす。」という新しい文化が生まれたと言われている。
私が子供のころは、太平洋戦争後だったから、日本の国は貧しくて、クリスマスツリーもなく、ケーキもローストチキンも食べた記憶もない。
時々買ったもらう小学〇年生という雑誌で、クリスマスツリーの絵やサンタクロースが、トナカイの引く橇に乗っているのを見たことがあるだけである。
小学高学年の時、クリスマスの朝、朝起きると、枕元に、羽子板がおかれていた。
少女の絵が、表面に描かれたものだった。
父と母が用意してくれたものとは、すぐにわかったが「サンタクロースが、持ってきてくれた」と喜んだ記憶がある。
「そうしたほうが、父も母も喜ぶだろう。」と考えたと思う。
中学生になって、「クリスマスの日は、雑誌で見たローストチキンを食べてみたい。」と、母にせがんだ。
その日の夕食は、ローストチキンではなくて、鶏の炊き込みご飯であった。
内心がっかりしたが、私が、育った家は、ぜいたくできるような家ではない。
当時は、ローストチキンは、高価なものであった。
鶏肉を買っただけでも、母にとっては、大きな出費だっただろう。
「おいしい、おいしい。」と喜んで、鶏の炊き込みご飯を食べた。
その夜、布団に入ると、隣の部屋で、母が父に言っていた。
「〇〇(私のこと)が、無理を言うのを黙らせるのは、簡単だ。赤子の手をひねるようなものだ。」
父は、何も言わなかった。
1950年代中頃の話である。
その頃「日本は、もう戦後ではない。」と言われていた。