人生は80から

人生100才時代。健康に豊かに楽しく過ごすには

母のこと(4)

私と一緒に住みたかった母、「本当に、申し訳ない。」と思った。

兄妹の中で、一番かわいがられたのに。

 

それでも、母は、介護施設に慣れてくれた。

 

しかし、ある日、ベッドから落ちて、頭を打ち、硬膜下出血を起こし、手術を受けた。

入院10日間。

ベッドから下りない10日間。

車椅子が必要になった。

 

そのころ、2週間に1回、母に会いに行ったが、会うたびに、母は自分の記憶を失っていった。

まず、父のことを忘れた。

そして、祖父のことも忘れた。

私が、結婚して、子供がいることも、忘れた。

「今度、退院したら、さぬき市に帰ろう。(母の生まれ育ったところで)〇〇(私のこと)と二人で暮らそう。」とよく言っていった。

 

次は、食事が飲み込みにくくなった。刻み食になり、さらに、お茶にまで、トロミをつけるようになった。

 

訪ねてゆくと、うれしそうな顔をして笑ってくれる。

その頃は、言葉をすべて忘れたのだろうか。

話をすることはなかった。

 

私が、母に食事を食べさせると、すべて食べてくれる。

介護士さんは言われる。

「いつも食べながら、眠ってしまうのに。やはり、娘さんの顔を見るのは、うれしいのやろな。」

 

母は、赤ん坊に帰って行っているのだ、と思えた。

 

介護施設に入所して、3回目の冬を間もなく越える頃、母は発熱して、入院した。

耐性菌による尿路感染症であった。

そして、母は帰らぬ人になった。

 

父も母も祖父も私のことを可愛がってくれた。

本当に、私は恵まれていたと思う。

だから、大人になって、人生につまずくことがあったけど、それなりに生きて来ることができたと思う。

そして、今の穏やかな生活ができるのだろう。

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アオイの花